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【開催報告】オンライン配信イベント「都市と農~農ある世田谷は実りを増やす」(3/19)を開催しました!

 

世田谷コミュニティ財団では、2021年3月19日、昭和女子大学との共催で、連続セミナー「都市コミュニティの今とこれからを考えよう!~世田谷での実践を切り口に~」の第2回目として、オンライン配信イベント「都市と農~農ある世田谷は実りを増やす」を開催しました。

本セミナーは、当財団が実施した「設立記念助成プログラム・ココロマチ」の報告の場として位置づけ、助成先団体から事業の報告を実施頂きました。

また本助成プログラムのテーマである、「農あるまち・世田谷」を、どう守り、次世代に引き継ぐか、実践者と共に考えました。

セミナーには、本セミナーの共催団体である昭和女子大学の粕谷先生にもご登壇頂き、都市における農のこれからについて、コメントを頂きました。

本セミナーには50名近くの方々にご視聴いただきました。ありがとうございました。

なお、当日の配信動画は、世田谷コミュニティ財団のYouTubeチャンネルからご覧頂くことが出来ます。

https://www.youtube.com/watch?v=6OsWKprgpO4

 

【開催概要】

連続セミナー「都市コミュニティの今とこれからを考えよう!~世田谷での実践を切り口に~」
第2回「都市と農 ~農ある世田谷は実りを増やす」

■日時

2021年3月19日(金)19:00~20:30

■主催(共同開催)

一般財団法人世田谷コミュニティ財団
昭和女子大学

■開催方法

オンラインにより開催(ZOOMによるウェビナー形式)

■登壇者(敬称略)

大江亮一(じゅんかんチャレンジ世田谷桜丘推進協議会)
田島文一(テヅクリ畑の会)
粕谷美砂子(昭和女子大学 人間社会学部 現代教養学科 教授)
福永順彦(世田谷コミュニティ財団 理事)
水谷衣里(世田谷コミュニティ財団 代表理事)

 

1.主催者あいさつと趣旨説明

冒頭に、一般財団法人世田谷コミュニティ財団代表理事の水谷衣里から、登壇者のご紹介を行いました。

また今回のセミナーを共催頂いた昭和女子大学にて教鞭を採られている人間社会学部 現代教養学科の粕谷美砂子先生から、昭和女子大学の学生が取り組む「SWU Agri-Girls(昭和女子大学 アグリガールズ)」の活動をご紹介いただきました。

「アグリガールズ」とは、世田谷区桜丘にある中杉農園に、授業を通じて農作業の手伝いに行ったことをきっかけに誕生した学生グループです。授業終了後も活動を続けたいという学生の自主的な発意から結成された同グループは、授業終了後も中杉農園で引き続き活動しているとのことです。

(参考URL:昭和女子大学 人間社会学部 現代教養学科:ブログ記事

この後、代表理事の水谷より世田谷コミュニティ財団の設立背景や経緯と、現在の事業内容について紹介を行いました。

 

2.イントロダクション

続いて当財団理事の福永順彦より、「設立助成プログラム・ココロマチ」について、背景と意図を解説しました。

当財団では、設立を記念した初めての助成プログラムのテーマに、「都市と農」を設定しました。テーマ設定の背景には、東京において農地が減少傾向にある中、世田谷に残された農地は極めて貴重な財産であること、現行の生産緑地制度が2022年に変更され、一気に農地が減るのではないかと危機感を覚えたこと、などがあります。

解説では、世田谷区の農をめぐる状況について、情報提供がありました。また生産緑地法をはじめとする関連法の改正により“農地が都市にあるべきもの”と位置付けられたこと、一方で都市住民にとっては農を「風景」や「緑」として捉える傾向が強く、産業、環境、食、文化など、全体性を持った「農」として捉えられていないことや、農家とのつながりはまだまだ十分ではないことが説明されました。

さらには農家が先祖代々引きついできた農地を相続でやむなく手放さざるを得ない状況にあること、都市の「農」を守るためには、農家を支える市民として、農のスピリットを理解する人を増やしたいと考えていることなどが、説明されました。

 

3.実践者からのプレゼンテーションとディスカッション

続いて、設立記念助成プログラムの採択団体2団体から、活動報告を行いました。

 

(1)活動報告1:大江亮一さん(桜丘じゅんかんチャレンジ推進協議会)

最初の活動報告は、桜丘じゅんかんチャレンジ推進協議会の大江さんです。

「じゅんかんチャレンジ桜丘推進協議会」は、東京農業大学(世田谷区桜丘)のリサイクル研究センターで開発された生ごみ肥料「みどりくん」を核として、世田谷区桜丘周辺の生産者支援、消費者による地産地消、そして小・中学校における食育・環境教育等へと「じゅんかん」の輪を広げ、食と農で地域を繋げる活動を行っています。

プレゼンテーションでは、土壌の専門家である後藤逸男さん(東京農大名誉教授)が開発したペレット状の肥料「みどりくん」の紹介や、それを活用した地域内循環の取組みについて、解説頂きました。

同団体からは、再生されたペレット肥料「みどりくん」が、桜丘にある農家に提供されていること、また育てられた野菜は、地域の学校に提供されていることが紹介されました。

また同団体では「じゅんかん経堂日曜朝市」を、烏山川緑道沿いで開催し、桜丘の野菜を地域住民が直接購入できる機会をつくっているとの報告がありました。

発表頂いた大江さんからは、桜丘小学校では、環境・食育授業を実施し、土や肥料のことはもちろん、世田谷の農業や生産者の仕事についても、小学生に向け伝えているとのことも教えて頂きました。また、こうした取り組みが評価され、2019年には「グッドデザイン賞」を受賞されたとのことです。

協議会は今後の目標として、桜丘小学校にある畑と庭(ファーム&ガーデン)を地域主体で活用できないかと考え、学校に提案しているとのことです。

 

(2)活動報告2:田島文一さん(テヅクリ畑の会)

次に、テヅクリ畑の会の田島さんから、報告を頂きました。

また報告に先立ち、当財団が2020年12月に同会が開催する「てづくり市場」を取材し、作成・編集した動画を、参加者の皆さまにご覧頂きました。

【YouTubeチャネル:てづくり市場(テヅクリ畑の会) 20201211訪問

テヅクリ畑の会は、世田谷区の中でも農地が多く残る喜多見エリアを中心に、農あるまちづくりを目指して活動を行っています。

代表の田島さんは、喜多見生まれ・喜多見育ちの地元の方です。地元の農地の減少に心を痛め、「都市に農業・農地と緑を残したい」と、自宅近くにある喜多見農業公園でボランティアを始めたことをきっかけに、テヅクリ畑の会の設立に至りました。

報告では、農業公園時代の仲間とともに、2018年にテヅクリ畑の会を立ち上げ、地域の農家の手伝いをするようになったこと、地元の慶元寺の駐車場をお借りして「てづくり市場」を開催していることについて、お話頂きました。そのほかにも農に関する映画会や食事会もしているそうです。

田島さんからは、身近な場所に「農」がある喜多見エリアの良さを大切に、農家と住民との交流を通じて成熟したまちを目指していきたいこと、農地が残るといいねという人を増やしていきたいこと、そのために農に関わりたい人と農家をつなぐネットワークづくりを住民目線でやっていきたい、といった展望をお話しいただきました。

 

(3)ディスカッション

活動報告に続き、当財団代表理事・水谷の進行のもと、助成先2団体と、昭和女子大学の粕谷先生、当財団理事の福永の5名で、ディスカッションを行いました。

ディスカッションの冒頭では、粕谷先生から2団体の活動報告についてコメント頂いたほか、今後どのような活動をされていくのかとの質問を頂きました。

これについて、桜丘じゅんかんチャレンジ推進協議会の大江さんからは、農大での「みどりくん」の生産は終了することになったが、和光市にある会社が共感し生産を引き継ぐことになったこと、これをきっかけにじゅんかんのしくみを世田谷区外に広めていきたいとの発言がありました。また活動を通じて、引き続き世田谷にいる何百年もの歴史を背負った農家と住民とをつなぐ役割を果たしていきたい、と回答いただきました。

テヅクリ畑の会の田島さんからは、「てづくり市場」は慶元寺の理解と周囲の農家や住民の方々の協力によって成り立っていること、市場を始めた結果、甘酒などを振る舞ってくれる人や、近所の方の紹介で出店者が見つかるなど、市民の輪が自然に広がっていることなどをご紹介頂きました。またテヅクリ畑の会の活動を通じて、農家の方が近隣住民を知り、多くの住民がボランティアで関わっていることを知って、この活動を応援してくれていると思う、との発言がありました。

<写真:昭和女子大学の粕谷先生>
<桜丘じゅんかんチャレンジ推進協議会の大江さん>
<写真:テヅクリ畑の会の田島さん>

 

4.クロストーク「農ある世田谷のこれから」

最後に、「農ある世田谷のこれから」と題し、粕谷先生と福永理事とのクロストークを行いました。

クロストークの冒頭では、粕谷先生から、「じゅんかん」というキーワードはSDGsにもつながること、したがってグローバルにも通じる話であるとの発言がありました。

また「農に引き寄せられるきっかけ」として、住民と農家とのつながりづくりやネットワークの構築は重要であること、活動報告からはそうしたつながりが感じられ、世田谷コミュニティ財団の活動が、世田谷の課題解決につながっていることが実感できた、とのコメントを頂きました。

福永理事からは、経済的合理性から考えると都市と農地は分けた方がよいと言われるかもしれないが、その合理性が問われている。農家としても、3.11以降、都市の農に対する印象が変わったと感じる。しかし、農家もこうした状況に対して政策に振り回されていると感じているのではないか、との発言がありました。

また今回の助成先2団体は、世田谷区内の農家とのコミュニケーションを深め、都市住民と農家とのつながりをつくり、関係性を丁寧に解きほぐしていると思う、とのコメントがありました。

ディスカッションの途中では、視聴者の方から質問を頂きました。

質問では、農を通じたコミュニティを形成すること、都市で農地を残すことの意義について、農家自身の意識がどう変化しているかとの投げかけがありました。

これに対して福永理事からは、生産緑地や農地の減少は世田谷にとって大きな損失だが、先祖代々の農地を喜んで手放す農家はおらず、継続するための選択肢が少ないのが課題だと感じているとの発言がありました。一方で、都市に農が必要だという意識はコロナ禍の中でも強まりつつあり、徐々に社会が変わりつつあると感じている、周りから農家に対して農地があることがありがたいという気持ちを伝えていくことが大切ではないかという回答がありました。また、ファーマーズマーケットなど農家にとって消費者の顔を見て売れる場所があることで、農家も消費者と繋がって元気になるのではという補足もありました。

最後に、粕谷先生から、人生100年時代と言われる中、大江さん・田島さんともに会社勤め後に農に取り組むのはキャリアとして興味深いという発言がありました。

これに対して福永理事からは、自分自身も農に夢中になっていること、本気で農に関わるためこの春から働き方を変える予定であること、との応答がありました。

また今後、世田谷コミュニティ財団としても、都市住民が「農民」としての意識を持つ、あるいはそのための関わり方の手がかりをつくるといった動きを模索したい、との発言がありました。

 

5.クロージング

クロージングとして、当財団の代表理事の水谷より、登壇者への謝意を述べると共に、共催頂いた昭和女子大学への感謝の意をお伝えしました。

また、今回の取り組みを通じて、世田谷は食べること・作ること・循環することが完結できる街であること、今回の助成先2団体のように、都市の農や自然を重視する様々な活動が存在することが世田谷の強みであり、そういった団体を繋げ、可視化することが、世田谷コミュニティ財団の役割だと感じたこと、こうした役割を意識しながら、今後も活動を続けていきたい、とのまとめがありました。

 


設立記念助成プログラム「ココロマチ」は、財団設立以前から募り続けてきました「設立記念助成寄付プログラム」への、皆さまからのご寄付を原資として実施致しました。

同プログラムにご寄付頂きましたみなさまには、この場を借りてお礼申し上げます。