news ニュース

【開催報告】「世田谷農ツアー上祖師谷編」開催しました!(11/3)

【開催概要】

1.日時:2019年11月3日(日)12時20分〜17時15分
2.場所:上祖師谷地区会館〜上祖師谷の農家〜上祖師谷1丁目区民集会所
3.主催:一般財団法人世田谷コミュニティ財団
4.協力:JA東京中央
5.参加者:一般参加者20名、世田谷コミュニティ財団4名、JA東京中央1名
6.アンケートの結果:アンケート回収数14人全員が「満足」との回答

 

【ツアー概要】

世田谷の中でも、比較的規模の大きな農地が残る上祖師谷で5件の農家をめぐり、内4件の農家の方から直接話を聴きながら農地を巡るツアーを行いました。(文責:世田谷コミュニティ財団 福永順彦)

 

1)オリエンテーション

  • ツアーおよび、都市と農に取り組む趣旨(世田谷コミュニティ財団 福永)
  • 世田谷の農地の状況について(東京工業大学大学院 本澤さん)
  • 参加者自己紹介、JA東京中央福田常務のご紹介

 

2)宍戸園

  • 成城に近い立地で、養蜂を行い「成城ハニー」の名前で商品化をしています。今回はご都合によりお話を伺えず大変残念でしたが、CSA(Community Supported Agriculture)の取組みにも興味を持たれており、今後お話を伺いたいと考えています。
  • 周囲に花を植えてミツバチを飼っている。イベント等ができるコーナーもある。
  • 隣接して、トレーラーを活用したコーヒーショップを息子さんが経営しており「成城ハニー」を販売している。

 

3)はないち(吉誠)農園

  • はないち農園代表の吉岡誠市さんは、都市での農業経営の在り方を考え、少量多品目の野菜栽培を行っています。また、ふれあい農園として、農作業の体験を積極的に受け入れています。
  • 農作業体験には若い女性なども参加している。興味を持つ人が増えていると思う。
  • JAのファーマーズマーケットやイベントでの販売の他、直販所を設置し、近隣の住民にも買ってもらえるようにしている。
  • ポットの花も育てており、直販所で近隣向けやイベント時に販売している。
  • 無農薬ではないが、農薬撒布時には周辺に配慮し、風向きや撒布時期(初期のみ)に配慮している。
  • コンポストは密閉型の容器を使い、においに配慮している。また日曜の午前中は耕運機をかけない、といった周囲への配慮もしている。
  • このあたりの土質は関東ローム層の上に「くろぼく」といわれる土が乗っている。天地返しという手法で、70cmくらいから掘り返し、土を混ぜ合わせることで肥沃な土になる。
  • 水は水道を使っている。家庭用とメーターを分けて下水料金は払わないしくみになっている。

 

4)高光農園

  • 現在JA上祖師谷支部長の高橋光正さんは、上祖師谷地域のまとめ役です。農の持つ歴史文化の側面に造詣が深く、自ら設置した「耕古館」に昔の農機具や生活用品を集めています。今回の訪問にあわせていくつかの農機具を外に出しておいていただきました。
  • かつての農業は、地域のお祭りや文化を担っていた。地域の地名や歴史を尋ねる古地名ツアーを実施している。
  • 地域の農家の名字は同じ場合が多いので屋号があった。かつての副業を屋号にしている場合が多い(すみや、ちょうちんや など)
  • 小学校にも農機具のことを紹介している。シンプルな構造ながらいろいろな重さをはかれるに「天秤はかり」興味をもった小学校の先生がいた。
  • 加賀野菜「水前寺菜」の栽培にも取り組んでいる。
  • JAのファーマーズマーケットやイベントでの販売の他、直販所を設置している。

 

5)大下(佐治)農園

  • 佐藤治男さんは若い頃から専業農家として家業を継ぎ、地域のまとめ役を担っていました。かつては乳牛を飼っていましたが、現在は花卉を中心に扱い、息子さんが跡を継ぎ事業を承継しています。
  • 昭和20年代の後半から30年頃にかけて、国民の食生活が変わり牛乳の需要が増えたため、乳牛を飼う農家が増えた。乳業会社が集めていた。
  • 昭和40年代になると周囲が宅地化し、し尿の処理やにおい対策に当時で300万円の経費がかかることになり採算があわないので、乳牛の飼育をやめて花卉に移行した。
  • 自分には花があっていると感じた。
  • 花の特性を活用した技術(球根を冷凍する技術など)を導入し切り花を中心に扱っている。
  • 花卉は設備に経費がかかるが、収益もあがる。
  • 都市型の小規模な農園なので、少量多品種で需要に対応している。他の農園と連携するといった手法も必要と感じている。

 

6)吉実園

  • 吉実園の吉岡さんは世田谷の農家としては2haという比較的大規模な農園を経営しています。植木業とともに養鶏に力を入れています。
  • もともと、ニワトリを飼い始めたのは雑草対策。年間17〜8回の草取りをするために人件費が20万円近くかかる。
  • 都市の農園の生き残りを考えている。直販所も考えているが、駐車場が必要であり、その場合は固定資産税がかかるので課題である。
  • 現在は1100羽のニワトリがいる(ボリスブラン、アロウカナ)。
  • 豚も飼っているが、現在は豚コレラの影響で農園に豚はいない。植木業で廃材として得られた木をチップにして豚の飼育場に入れる。米ぬか、豚糞と鶏糞を混ぜ合わせ、2年かけて熟成させることで良い堆肥ができる。そのため吉実園の農作物は良いものができる。
  • 遺伝子配合飼料は与えていない。経費はかかるが、どんな気候でも豊作になるようなものは植物とは認めたくない。そのような飼料を食べたニワトリの卵を自分の子どもに食べさせたいとは思わない。
  • 廃鶏になるまで2年くらい。廃鶏したニワトリは、業者にお願いし、レストランのスープ用に出荷されているようだ。事前に育てているので肉は旨い。

 

7)ふり返り

  • ツアーの最後に、上祖師谷一丁目区民集会所に集まり、今日の感想を出し合いました。
  • 高橋光正さんが、カンパニュラの鉢を参加者全員に届けてくださいました。

 

<それぞれの農家に “個性がある”という学びがあった>

  • さまざまな農業のカタチがある。兼業・専業・野菜・花・ニワトリ・サラリーマンからの就農など。個性があり、印象的でした。農家さんの活躍に姿に感動しました。これからも続けて欲しいです。
  • 各農家さんが工夫をし、得意分野を掘り下げていらっしゃることに感心しました。だから、残っているのだろうと感じました。
  • 宍戸園→養蜂。養蜂園の横におしゃれなカフェがあるのが、ハチミツのイメージとマッチしていた。
  • はないち農園→多品種に取り組み、店先販売をしている。ふれあい農園で地域の人とつながっている。
  • 高光農園→珍しい品種に取り組む。地域の農の文化を残すために農機具の保存をしている。
  • 大下農園→花に特化している。時代にあわせて(乳牛から)変わってきたこと。
  • 吉実園→循環型の農に取り組んでいること、ニワトリや時間をかけた堆肥。

<農に対する知識、工夫に感心した>

  • それぞれの農家さんは自分の生き方、経営者として活躍されています。農家にはすぐになれるものではありませんが、もっと注目され多くの人に憧れられる仕事なって良いと思った。
  • エコシステムが完成されている! すごいこだわりや工夫があった。
  • 時代の流れに上手く対応していた。(育てる作物の希少性)
  • 手間をかけるがいかに作業負担を軽減していくか。知恵が生かされている(はないち農園)
  • 昔使用していた農機具を体験することで原理を学べるし、歴史が知れることがすごい。道具の知恵は農家さん、人類の知恵(高光農園)
  • 自然の摂理に驚き、圧倒された。(大下農園:植物の本能を活かした花づくり、吉実園:時間をかけて、大地にかえす。2年以上など)
  • 冷凍球根。冬でも育つ技術を伺い長年のノウハウがすごい(大下農園)
  • 品種や肥料や薬や歴史や病気やたくさんの科学的知識をもっていること。+卵めちゃくちゃうまかった(吉実園)

<農業を続けて行く気持ちがすばらしい>

  • 時代の変化を捉えて乳牛から切り花へ、選択を続けて農家を続けてきた話が印象的でした(大下農園)
  • 農業でどれだけやっていけるか、新しいことを常に考えているところがすごい。すべて大地に返すという考え方がすばらしい。(吉実園)

<地域と交流していることがすばらしい、人柄に触れることができた>

  • 農家の方々が笑顔でお話してくれたこと。
  • お話がわかりやすく、もっと聞きたいと思う会でした。
  • 自然を相手にしている方は心が豊かだなと感心した。
  • 地域住民の交流の中農業を続けられるのがすごいと思った。頑張って欲しいです!
  • かつては農地しかなかったが、皆が住むようになって農地が減ってしまった。近隣住民に配慮をしてくれて私は何も知らなかったと思ったことが最大の発見。
  • 近隣の方への配慮によって農地と宅地が共存できている。(はないち農園)
  • 身近な所で農業が行われていたが、気づいていない所もあった。地域とのつながりを感じた。

<地域の自然や文化のよりどころになっている>

  • 農家が地域の土地、文化のより所であること。農あるまちづくりにどう生かすか。
  • 様々な領域と連携を今後さらに強めることで新たなイノベーションが起こる可能性を感じた。
  • 世田谷の豊かな生態系を深く知ることができたツアーでした。
  • 世田谷にこんな空間があるとはおどろきでした!!(吉実園)
  • 多角経営がすごい!!生態系の中にいるこだわりがすごい!!循環型農業のしくみ。特にブタ。(吉実園)

 

【おまけ:懇親会】

会場:まちづくりカフェMUIMUI@恋月夜(南烏山5-24-7 第2幸栄ビルB1F 「恋月夜」内)
メニュー:

  • 吉実園のたまご(たまごかけご飯)
  • 本日の農園で買えたもの(吉実園のかぼす、はないち農園の唐辛子、高光農園のピーマンなど)
  • その他、JAのファーマーズマーケットや中杉キッチンガーデン(桜丘)の白菜、にんじん、柑橘類など
  • かるいおつまみ
  • 飲み物:ビール、焼酎、ウイスキー、てづくりはたけの会のしそジュースなど